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『…え?』
俺だけ時間が遅れてるような感覚。
いつもより滑舌に喋る綾。
本当に、本当に嬉しそうに。
ゆっくり、聞こえる。
耳から入る言葉を
頭で理解するのに時間が掛かって。
「大好きだよ、祐二!
不安だったんだよね!
偽物の愛なんか、
意味なくない?
本物の愛しか
要らないよね。
…さぁ早くしてよ。
今更やっぱり無理だとか
言わないよね?」
包丁を片手に、
黙ったままの俺を見て
綾は立ち上がって
戸棚を開けた。
一番上の右側。
ビンが沢山あった。
なにあれなにあれ…
何?あれ。
赤黒い塊。
動いてる?
酒に何か漬けてるの?
…あれは、なに?
「綾ちゃんね~?
こんなに沢山の愛を
貰ってるの!
みんな、自分で
その包丁で死んだの。
ゆうちゃんの心臓も
もうすぐね、
ホルマリンに浸けて
ここで綾ちゃんと
ずっと一緒になるの。
綾ちゃんね
すぐ寂しくなるから
増えちゃうんだけど。
でも
生きてて体があると
逃げちゃうかもだし。
綾ちゃんが愛してるんだから
こうやって愛を表してくれないとね。
綾ちゃんが殺すんじゃないよ?」
小さい子みたいに
無邪気に。
「…本物の愛を証明して、自ら死ぬの。」
綾が求める愛の形?
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