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あたしのそんな様子を見て、悠がまたクスクス笑っている。
「悪ぃけど俺、これでもナンバーに入ってるから。バイトなのにな」
ポケットから車の鍵を取り出し、運転席側の開ける。
そしてすぐに助手席側へとまわり、そっと丁寧にドアを開け
「どうぞ、梨亜姫様。カボチャの馬車ではありませんが…」
ニヤッと一笑し、軽くお辞儀をして、あたしに車に乗るようにと促す。
いつもの悠と違ってなんだか恥ずかしいというか照れてしまう。
「ありがとう。」
笑顔でそう告げ、ゆっくりとカボチャの馬車代わりの悠の愛車へと乗り込んだ。
あたしが座ったのを確認すると、ドアを閉め、悠も運転席へと乗り込む。
キーをさし、エンジンをかけ、アクセルを踏むと次第に車は加速していった。
「あ、俺の源氏名“ハルカ”だから。」
運転しながら、おもむろに悠が言った。
「悠…と言う字が“ハルカ”とも読むから?」
「正解。解りやすいっしょ?」
何故か自慢気に話し出すその様子がおかしくて
「単純で悠らしいわね。」
あたしはフフッと思わず笑いを溢した。
「酷くねぇ?頑張って先に潜入捜査してるっていうのに!」
「仕方ないじゃない。あたしはホストできないんだから。」
少し拗ね気味の悠を横目で笑いながら、他愛ない会話をして、つかの間を楽しむ。
これから『仕事』だというのに、こんなに呑気でいいのだろうか…。
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