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「ルイだぁー!?ふざけんじゃねぇ。せめて…ドンペリのピンクにしろよ」
顔面蒼白とは、こういうときに言うのだろう…と他人事のようにあたしは考えながら、まだクスクス笑っていた。
「そうね。なら…ロゼ3本で手をうってもいいわよ?」
おもいっきり、意地悪な笑みを浮かべて横目でちらりと相手の様子を伺った。
先程まで深刻な話をしていたと言ったって、誰にも信じてもらえないだろう。
「俺の給料奪う気かよ!」
「儲かってるんでしょ?ナンバー入ってるんなら、軽いわよね?」
フフッと鼻で軽くあしらうように笑い、窓を開ける。
外気に触れた頬はひんやりと心地よい。
この場所に停車したときよりも辺りは一層と闇に飲み込まれていた。
「さっさと偵察に行くわよ。ハルカさん?」
そう言うあたしを他所に軽く「チッ」と舌打ちをして、悠は再びエンジンをかけた。
「おいしーいカクテル作ってくれなきゃ、あたし帰っちゃうから」
「とびっきりのやつ作ってやるよ。ホスト姿の俺に惚れても知らないぜ?」
片手でハンドルを操作しながら、得意気に笑う。
「ばぁーか。悠なんかに惚れるくらいなら、芸能人に恋するわね」
お互いに冗談を交えながら、ホストクラブ『アクア』へと車を走らせた。
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