第三楽章

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あたしは少し、周囲をキョロキョロと見渡した。 悠の…ハルカの姿が見えなかったから。 「あの、…ハルカさんは?」 声をかけてくれたホストに尋ねてみる。 すると、そのホストは優しく微笑み 「申し訳ありません。本来ならご同伴いただいた梨亜様をハルカ本人がお席までご案内するべきなのですが…」 少し口元を歪め、苦笑まじりに 「あちらにハルカをお待ちの別のお客様がいらっしゃいまして。お待たせしてしまったため、ただいまハルカがお詫びをしに行っております。」 左手をある席へとやり、ハルカがいる場所を指し示した。 見るからにお金持ちという風貌の女性。 少しキツい印象を見受ける 「…人気なんですね。ハルカって」 お待たせしてしまったお客様に謝っているハルカを見て、思わずクスクス笑ってしまう。 「はい。ハルカは、お客様を自分なりに理解して、楽しんでいただこうとする姿が人気なんです。」 そうホストは言い、にっこりと微笑む。 すると背後から、また別のホストの声が聞こえ 「ハルカが戻るまで俺がお相手しますよ、梨亜さん?」 後ろを振り向くと、今とても会いたくないホストナンバーワンの一ノ瀬玲音ことレオがあたしを不敵に見下ろしながら立っていた。
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