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しかし、当の本人のレオさんは、あたしの言うことなんかお構い無しという感じだ。
寧ろ、「クククッ…」と小さく小刻みに肩を震わせて笑っている。
「すまないね。だがしかし、もう店では落ち着いて話し合いもできないだろう?」
すました顔で話を続けるレオさん。
「ハルカが来るまで、ご近所のよしみで俺が相手をしてやるよ。」
ご近所のよしみも何も、今日の夕方初めて会ったんじゃない。
そう思ったけど、代わりにあたしはめんどくさそうにため息を一つ。
「歩き?それともタクシー、車?…ナンバーワンホストさん?」
最後はたっぷり嫌味を込めて。
「あぁ。チャリ。」
「…はい?」
あたしは聞き間違いかと思い、再び問いただす。
「だから、チャリ。自転車。車のキー、今持ってねぇもん。だから出入口にあったチャリの鍵を拝借してきたんだよ」
そう言って、1人すたすたと裏口へと歩いていく。
あたしは、ハッと我に返り急いで後をついていく。
「持ってきなさいよ。車のキー」
「嫌だね。めんどくせぇ。」
束の間の沈黙。
暫し、あたしたちは睨み合う。
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