第2楽章

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「梨亜ぁ~。校内コンクール出るんだって?」 レッスン室から出てきた直後、同じピアノ専攻の森谷湊が突然声をかけてきた。 森谷湊(モリヤミナト)とは、入学式のときに知り合った。 お互いピアノ専攻ということや苦手な曲も似ていて、話が弾み、現在に至る。 彼女は、明るく適度にサバサバしていてとても話しやすい。 身長が少し低めのためか、よくヒールが少し高めのミュールやパンプスなどを履いている。 「それ、ソースはどこ?」 左手で楽譜を数冊持ち、後ろ手でレッスン室の扉を閉め、湊に目をやる。 「は…?おたふくソース…とか?」 訳がわからないという様子で軽く首を傾げる。 「そっちのソースじゃなくて。えーと、情報源はどこから?」 笑いを堪えながら、言い方を変えて再び同じことを尋ねながら歩く。 今度は、理解できたようで、成る程という表情をし 「雨宮くんに聞いたのさ。なんか、『今度のコンクールに水無瀬が出場するらしいぜ』って…」 悠の声色を真似て、真相を語る湊。少しアイツに似ていたので、思わずクスッと一笑してしまった。 「そう。悠が…ね。」 ため息を1つ吐いていると 「で、本当に出るの?梨亜が出るのって珍しくない?定演でさえ拒否ってたのに」 興味津々とでもいうように、質問を捲し立てる。
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