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「加藤教授に薦められて…というか、定演に出なかったんだから、校内コンクールには絶対出ろって脅されたの。」
苦笑まじりに、事の真相を話すと
「…っ。だーから定演に出ておけばよかったじゃない。あたしら1年にはハードル高いでしょー。」
お腹を抱え、涙を流しながら笑っているため、顔が真っ赤になっている。
「そんなに笑うなっ!」
あまりにも笑われるので、恥ずかしくなり、あたしも頬を少し赤く染め、軽く湊の頭を叩く真似をする。
「まぁ、頑張ってよ。あたし応援するし。じゃ、あたし今から理論だから、またね」
手をヒラヒラ振りながら、湊は次の理論の教室へと去って行った。
あたしは湊の後ろ姿に2・3度手を振りくるりと踵を返した。そして鞄から携帯を取り出し、電話帳を開いてある人物に連絡をする。
早足で校内を出て、中庭へ向かう。数回のコール音の後に、女性の声で留守番電話の機械的なメッセージが流れて始めた。
「…久々に『仕事』が入ったの。今日、打ち合わせがてらバイト先に行くから。…なんなら同伴してあげてもいいわよ?」
最初は事務的にメッセージを吹き込み、最後の一言だけは、悪戯っぽく。
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