1- 三神家と。

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もともと妖怪に興味があった俺だが昨夜のことで当事者となった今、知らなきゃいけないことがまだまだ沢山あると実感した。 百鬼夜行…俺をさらった妖の集団に攫われた俺を助けてくれた劉は一応無事に帰って来た。ぱっと見でわかるような怪我はなかったし顔色も悪くなく、足取りも軽いように見えた。 だからかえって違和感があった。 あんな場所から帰ったにしては…きれいすぎる。 …だって、俺は見たのだ。 薄れていく意識の中、舌なめずりしながら背後から劉を見つめる恐ろしい妖を…。 姿カタチは人の様ではあったが決定的に違うところがあった。鋭いギラついた金色の瞳、鋭い牙、鋭い爪、長く垂れた舌。舌からはご馳走を見つけたかの様に涎がダラダラと垂れていた。 飢えてる、とすぐに分かった。 あのあと…劉は本当に無事だったんだろうか。 素人の俺にもあの妖が強そうだと分かった。劉は戦闘は得意で無いと言っていたし、強い妖の前では逃げるしか無いと言っていた。 だとしても…逃げられたのか?あいつから? あの数から? 劉のことを信用していないわけではない。 でも劉はいつだって自分からは何も言ってくれない、尋ねたとしても自分のこととなると口を閉ざしてしまう。 劉は、自ら助けを求めることも差し出した手を取ることもない。 それは劉が優しいからだと知っている。俺を危険に巻き込まないために何も言わないのだと頭では分かってはいる。 俺を式神様で助けてくれてるときも、薄れゆく意識の中で劉が「俺のせいで」と呟いていたのを聞いていた。 リュウのせいなんかじゃない、と声にしたくてもできなくて。そのまま意識を飛ばしてしまったのだ。 妖関連で現状の俺ができることはない。 が、親友としては複雑だった。もっと頼ってほしいし、痛みも辛さも話してほしい。俺ももう妖と無関係とはいえないのだから。 まあ、それに耐えかねたから今こうして和さんにあれこれ聞いているわけだが。 「…でも…なんで俺をわざわざ攫ったんだろう…あの場所は俺以外にも人通りはあったのに…」 「瑛史くんは劉ほどではなくても濃い霊気の持ち主なんだよ」 「そッ…そうだったんですか!?だから劉はあんなに真剣に止めたんだ…」 鬼岩山の様子を見てくると言った俺を劉は真剣に『鷹丸からは出るな』と引き止めた。 (…俺を守るため…そうだとしても、劉一人だけが傷付くのはちがうだろ…) 「劉から言われて無かったのは君のためなのかも…、瑛史くんみたいに今の状況を受け入れる方が珍しいんだよ、普通だったら妖なんて存在しないと考えるだろうしね」 確かに俺の反応は一般的ではない。 ま、これには理由があるだけど、その話はまた後で。
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