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「もう、無視しないでくださいよぅ」
るり子はむすっとして、薫に歩み寄る。
ようやくるり子に気づいたのか、薫は土いじりの手を止めて、るり子のほうを振り返った。
「おや、るり子君。何か用かい?」
相も変わらずマイペースな薫に、るり子は思わず頬をゆるめる。
「朝食、できましたよ」
ふむ、と薫は相づちを打った。
「そういえばまだだった。どおりでお腹が鳴る訳だ」
薫は一人納得した面もちで頷く。
よいしょ、と一人つぶやき立ち上がった。
「先生の“お気に入り”も作りましたよ」
「なるほど、ならば早く行かなくては」
声の調子こそ変わらないものの、薫の目の色が変わったのが、るり子にはわかった。
“お気に入り”のこととなるとうきうきとして喜ぶ薫を見て、含み笑いをする。
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