学生ホールの懲りない面々

12/15
前へ
/927ページ
次へ
「いいよ、その代り裏ドラのって、ウイスキー一本だからね。 レッドはだめだよ。せめてV.Oくらいにしてよね。」 「わかった、わかった。」   水口は手を振って答えた。 きっとこいつのことだ、うやむやにするに違いない。 そうしているうちに、漫研の安原信康さんがあたしと、水口のところへやってきた。 たまに行く松崎先輩の下宿で、これまたたまに会う漫研の人で、松崎先輩の同級生だ。 体は大きいが、ものすごく可愛い絵を描く。 「水口君、江草君、今時間ある。」 その問いかけに水口は「んーっ。」と考えるような顔をして答えた。 「信康さん、なんですか?」 安原さんは何か知らないけど後輩のあたしたちからも下の名前で呼ばれる。 「塚本さんがD&Dの新しいシナリオを作ってきたんだけどプレイヤーが僕一人だから、どうかなと思って。」 「すいません。今からちょっと用事があるんで。」 水口は軽く頭を下げると、「おーい、やっさーん。」とこれまた同級生の安本君のところへ歩いて行った。 「江草君は?」 あたしはホールの壁にかかっている時計を見た。 15時を少し回っていた。 もう少ししたらバイトに行こうと思っていたけど、せっかく誘ってくれているのに断るのも何か悪いなあ、と思って言った。
/927ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加