黒ラベルに唄えば

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まあ、実家にいたときは結局南極、最後まで新ちゃんと6畳を二人で使っていたんで、それに比べれば一国一城の主である。  残暑厳しい折、まるでサウナの中にいるような淀んだ空気の中、あたしは靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて2階に上がった。 ありゃりゃ、あたしの部屋のドアが開き、灯りがついている?すわ!ドロボウか?  あたしがひょいと部屋を覗き込むと、向かいの部屋に住んでいるお桂ちゃんが、下着姿で窓枠に腰を掛け、扇風機に当たりながら缶ビールを飲んでいた。  「おう、深雪ぃ、帰りんしゃい。」  あたしの大親友、お桂ちゃんは缶ビールを掲げると当たり前のように、あたしに言った。
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