ミューズ河は遠かった。

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「ムサシ」。学生の味方、安くてボリューム満点。というその店は、珍しく空いていた。 あたしは先輩のシャレードの後ろを安全運転で、かつ、教習所の鉄の掟を思い出しつつ運転した。 9月なので風が気持ち良かった。 あたしの雑念もこの風でおさまったみたい。 「深雪ちゃん、何かは分からないけれど、目的が見えてないんじゃないかな。」 ぐさっ・・・。 何と重い一言・・・。 確かにあたしには未来の目標がない。 このバブルの世の中、今なら職は幾らでもある。 しかし、正直やりたい仕事は無い。 自衛官とか、警察官は興味があるけれど、大学二年生のあたしにとってはホンのすこーしだけ先の話。と思う。 「ええ、その・・・。まあ、学祭も近いし、そろそろ演武会の支度でも・・・。」 「違うよ、さっきのバルジの話だよ。」 先輩は、から揚げ定食のから揚げに箸を伸ばしながら言った。 あたしは、ハンバーグ定食のキャベツの中に乱入していたラップの切れ端を箸の裏側で摘まんで灰皿の上に捨てると、「お冷おかわり。」と店長に言ってから先輩に言った。
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