通学電車

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電車が揺れ、肩がぶつかる度に、鼻を掠める。 嫌な香りではなく、心地いいような安心する香り。 横目で、彼の顔を見てみる。 目の辺りしかわからないが、切れ長で、睫毛が長い。 綺麗な人のような気がする。 ふと、そんなことが頭をよぎった時、電車が大きく揺れ、勢いで隣の男子学生にぶつかった。 「す、すいません…」 私が力無く言うと、男子学生はマフラーを口元からずらした。 「いや、仕方ないですよ。大丈夫ですか」 「…大丈夫です」 そう答えると、彼は少しだけ表情を緩めた。 それから再びマフラーに顔を埋めて、流れる景色に体を向けた。
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