通学電車

6/11
前へ
/172ページ
次へ
「恋だね」 「…はい?」 昼休み。 目の前に座る友人、木下亜樹が意味ありげに言った。 「私、好きになったとか言った?」 「いやいやいや…。こず、自分では気付いてなくとも、それは立派な恋よ。いいじゃん!毎朝通学時間だけ会える彼って。素敵!」 亜樹は目を輝かせて、夢見る少女のように言う。 私は亜樹の言葉と、今朝の男子学生の姿を思い浮かべた。 目が合った時、思っていたより背が高く、目が大きいことに気が付いた。 そして、不思議な香り。 今までで一番強くかいだ時、その香りを自分は知っている気がした。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加