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「本当…。この香りだ」
絵の具だったんだ。
「普段微かに香る時は、全く知らないものなんだけど…。ぶつかって強く香ってきた時は、かいだことある気がして」
私の顔を見て、雪野くんがはにかんだような笑顔を向ける。
「よかったら、そのスケッチブックあげる」
「えっ…。いいよ、悪いし」
「いいんだ。まだ家にたくさんあるし、新しい絵も描きたいし」
「……ありがとう」
もう一度、スケッチブックに描かれた絵を眺めた。
懐かしいような、優しいような。
自分の気持ちが和んでいくのを、私は感じていた。
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