微かな過去

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亜樹がうっとりしたように言う。 「柴田も見習いなよ」 「何で俺が」 「あんたも絵とか描けば、ギャップがあってもっとモテるのに」 「俺だったら、描くより描かれる方だろ」 私は二人の姿を眺めながらも、さっき思い出したことを必死に考えていた。 きっと、雪野くんからしていた不思議な香り――絵の具の香りも、その時にかいだものなんだと思った。 誰だったっけ。 何となく、カバンに入っているマフラーを握り締めてみた。 雪野…爽太くん…。
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