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その時の彼は、大きな変化は無いけれど、ごくごく普通の男の子のようだった。
「少し、仲良くなれたかなとか思ってたんだけど」
梢自身、美術の時間だけ話せる佐伯との時間が、楽しく感じるようになった時の出来事だった。
「まあ…。仕方ないよね」
一週間前、教卓の前で転校の話をしている佐伯を見て、ひどく悲しくなったのを覚えている。
「私、美術の時間に佐伯くんと話すの、すごく楽しかった。それがもう無いんだって思うと、悲しくなる…」
梢の言葉を聞いた佐伯は、少しだけ目を見開いた。
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