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佐伯は一歩、梢に近付く。
「ありがとう」
呟くように言った後、ポケットに入れていて暖まった手で、梢の右手を取った。
「俺、間宮さんのこと、けっこう好きだったよ」
そう言い、佐伯は少しだけ表情を緩めた。
出会ってから初めて見る笑顔だった。
「…これって、別れの握手?」
「そうなるね」
梢は、自分より少し大きな暖かい手を、静かに握り返した。
「また会えるかな?」
「どうだろう」
佐伯は白い息を吐いた。
「間宮さんの願いが、叶えばいいよね」
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