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《――三番線発車します。閉まるドアにご注意下さい。》
通勤、通学者でごった返しになった駅に、アナウンスが空しく響く。
私はいつものように、階段からすぐ側にある乗り口から電車に乗り、すき間を見つけて入り込んだ。
ヘッドフォンから漏れる、軽快な音楽。
大声で会話する女子高生。
大股を広げ、イビキをかきながら眠るスーツ姿の男性。
…鬱だなぁ。
私、間宮梢は、高校に入学してから毎朝この電車を利用するようになり、今は二年生だけど、まだこの状況には慣れない。
静かにため息を吐いた時、ほのかな香りが、鼻を掠めた。
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