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「お久しぶりです、薫さん」
「おや……夜弥君か。久しぶり、今日も勉強?」
「いえ、今日は違います」
癖のある群青の髪を揺らしながら首をふる夜弥に、私は座るように進める。
ちょこん、と座った彼の怜悧な双眸が私を見遣る。
「あの、先日はありがとうございました」
「ん?何が?」
「雪弥に、貴方が俺にと渡して下さった物の事です。とても、美味しかった」
「私の勝手なお節介だから、気にしなくていいよ」
「いいえ、そういう訳にはいきません」
苦笑して手をふれば、キリッとした眼差しで私を見てくる。
ここは正反対だよね、雪弥と。
彼と雪弥は、ここまでの会話で分かるように、れっきとした兄弟だ。
見た目で似ているとすれば、瞳の色くらいだろうか。
そんな事を考えていれば、ゴソゴソと彼は鞄を漁ると何かを取り出した。
「それは?」
二枚のチケットを見ながら、首を傾げる。
すると、気恥ずかしそうに目を伏せる彼は、口ごもりながら応えた。
「その……司に、女性にお礼をする時は……どうしたらいいか、聞いたので………」
「それで、このチケットか。あ、これ新しく出来たテーマパークの奴だよね」
「はい……あの、もし良ければ、ですが………今度の日曜、一緒に行きませんか?」
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