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心の中でぶつくさ文句を言っていれば、ふと彼は紫の瞳に僕を映した。
「なぁ、お前・・・・・えーっと・・・・・」
「あのね、言い出してから悩まないでくれる」
「うるせぇ、ちょっと黙ってろ」
気まずげな表情で彼は頭の後ろを掻きながら口ごもる。
彼のいつもの癖を眺めている間、何度も「あー」やら「そうだな・・・・」を繰り返す。
「どうかした?」
「その、だな。確かお前、この前弓道の大会で優勝したよな」
「あ、うん。まぁね」
この町にしては珍しく大きな大会で、友人に誘われて参加した。
昔から、体を動かすのは好き。だから、むしろ楽しかった。
しかし、半月も前の事なのに今更なんだろう。
不思議に思っていれば、小さな箱を彼は鞄から差し出し、テーブルに置いた。
水色の包装紙に可愛らしい白のリボンでラッピングされたもの。明らかに、プレゼント。
「忙しくて祝ってやれなかった詫びっつーか・・・・・あー、祝いの品だ」
「開けていい?」
「お、おう」
箱に視線を向けたまま尋ねれば、ぎこちない返事が聞こえる。
包装を丁寧にとり、箱を開ければ僕は目を瞬いた。
そこには、小さな三日月がクロスしたピアスは収められていた。小さな紫のストーンがついたシンプルなもの。
「が、我慢しろよ?お前の好みよくわかんねぇし。とにかくあれだ、優勝おめでとうな」
ピアスから視線を上げれば、手を首の後ろにやり目を逸らしながら言うぶっきらぼうな幼馴染の顔。
目元が赤いのは、きっと照れているのだろう。
ほんの少し、胸が温かくなる昼下がり。
ピアスを手に取れば、あわてて企画書に視線を向けるのを見て思わず笑ってしまう。
息抜きに甘いスイーツでも差し入れてあげようか、そんな事を小さく思う。
~END~
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