††シュークリームとお喋りと††

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カラン……コロン…… 「いらっしゃいませ……あぁ、雪弥君か」 「薫さん、こんにちは!」 ドアにつけたベルの音に視線を向ければ、思わず微笑んでしまう。 もう、そんな時間になったのか。 この時間は、僕にとっては密かな楽しみだ。 だって、お客がお客だから。 そこには、小さな男の子が立っていた。 透けるような銀糸の髪に、水色の可愛らしいつぶらな瞳。 小さな常連さんに、私はカウンターを出て椅子に座らせてあげた。 「今日は一人?」 「うん、兄さんは勉強が忙しいから。来ちゃダメだった?」 カウンターに戻りながら尋ねれば、水色が不安そうに揺れる。 本当に隠し事ができない子だ。 それに苦笑を漏らして首を横に振れば、パァッと晴れた空の様に輝く。 この可愛らしい子と彼が兄弟とは、少しうらやましい…… 「ご注文は?」 「うんとね……シュークリームとミックスジュースがいい!」 メニューを広げて悩みながらも、指差して選ぶ様はとても無邪気だ。 この子はシュークリームが好きだ。 だから何時も、とっておく。 笑って了承すれば、それらを手際よく準備する。 「ねぇねぇ、薫さん!昨日ね、テストで百点とったんだ!」 「それは凄いね。彼に教えてもらったの?」 「うん、兄さんが教えてくれたんだ。兄さんも褒めてくれたよ!」 えらい?えらい?と期待するように見上げる雪弥に、小さく頷いて頭を撫でてやる。 小さく無邪気にこの子供は、お兄さんにべったりだ。 だから、頑張っているし……私にも良く勉強を聞きにくる。
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