一章 「白の奇跡」

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空は、泣いていた。  理由は単純明快、雨である。雨は、世界の全てを音で包み込む。遥か上空から放たれたその雨粒の一つ一つが、木々や花々の葉や土や岩や、様々な物にぶつかり、意志を持つように音を奏でてくれる。  とある森の中に建つ西洋風な建物の中で、外のそんな音を一人の少女がソファに座りながら聴いていた。  少女はそれを聞きながら、隣に居る腹話術よりも少し大きい人形に話しかけていた。  しかし、勿論それは人形、幾ら話しかけたとしても答える筈が無いのだ。 「早く、貴女が私に"動く所"を見せてほしいわ」  それでも、少女は動くと信じているようだ。いつか動くと信じ、少女はずっと人形に話しかけている。
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