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10月9日 (土)AM10:46
【新東京市 第3区商業地区66号線】
キィ、と少年は少女に後ろから押されながらも、新東京市の第3区に体を進めた。
車椅子生活は慣れていないために不便な事はもちろん多かったし、一年たっている内に、体は筋肉が無くなり、体重も減り、髪が伸びて現在はポニーテールを作っているという姿であった。
女か!
一応ツッコんでおく。
帽子は一応日射対策としてだ。
いくら10月とはいえ、さすがにまだ暑さ厳しい都会のアスファルト地獄だ。
車椅子のゴムが溶けてしまう。
つーか今時車椅子とか自動じゃねーのかよ!とか色々言いたいのだが、少年が1ヶ月前意識を取り戻したのは、イギリスのロンドンにある病院で、そこには一般的な車椅子しかなかったのだ。
もちろん新東京市は全部自動なんだけど、流石に贅沢は言えないし、悪い気はしない。
とりあえずこうして今ここにいられるだけでも奇跡。
そうしておこうではないか。
「ね、暑くない?」
金髪ロングの髪をもつ少女、マリアル=リエルンは、少年に向かって気遣うような声をかける。
もちろんめちゃくちゃ暑かったんだけれど、そこは男の子、我慢するのが、いいじゃない。
「いや、全然大丈夫。つーか足以外はマジで大丈夫だって」
「うーん…………でも心配だから、ね」
「……ありがとな、マリアル」
優しいなぁと微笑んで、少年は自身の下半身を見た。
──もう歩けなくなった下半身。
まだ神経は生きているし、医学的にはなんの問題も無いらしい。
ちょっとぐらいなら動かせるし、足の指先だけでチョコチョコ動ける特技も未だに健在だ、 が
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