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なんの因果か、歩けなくなってしまったのだ。
から
今現在、友達であり親友であるマリアル=リエルンに車椅子を押してもらっている、というわけだ。
「──そういえばさ」
と、そこで何かを確かめるように少女は口を開く。
元々宗教の長である彼女ではあるが、今日は修道服ではなく、白いレースがついたスカートと、淡い水色のシャツ、それに少年がイギリスでプレゼントした髪飾りをつけていた。
「ん?なに?」
一方少年はというと、流石にスラックスはなかったので、紺のジーンズと、白いTシャツを着ていた。
どことなく可愛らしい絵がプリントしてあるのが気になってはいたのだが、「髪も長いポニーテールだし、似合うよ!」なんて笑顔で言われた日にはなんとも言えなかった。
つーか 髪も切らせてくれなかった。
「今からどうするの?───春一君」
春一
秋月春一 と彼女は少年をそう呼んだ。
「ん………とりあえずは学生寮は使えないだろうから、ホテルに行ってチェックイン。その後、街で必要なモンでも買うかな。正直学園にも顔出ししたいし」
「そだね」
笑顔でにっこり、とマリアルは笑って、予約してあるホテルに向かって足を進めた。
春一の車椅子を押しながら。
「………………」
秋月春一は、結局、その命を奇跡的に取り留めた。
取り留めたはしたものの、何故か春一の体はイギリスのロンドンにほど近い草原にボロ雑巾がごとく発見され、一年以上意識不明の昏睡状態でいたらしく、イギリス十字教徒は混乱を抑えるために、秋月春一を匿っていたのだ。
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