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一年前のあの事件は、歴史を揺るがすかのような大きな事象だったらしく、秋月春一が生きていると分かったら大変な事になる、落ち着いてからにしよう、とマリアルが提案してくれたのだ。
「懐かしい?」
「うーん………どうだろうなぁ……。実際には一年ぐらい経ってるんだろうけど、ぶっちゃけ一ヶ月しか経ってない感じだし」
「あはは、だよねぇ」
実質、昨日の夜に新東京市には着いたのだが、いきなり襲われていた少女を守ったり、どっかのクソ野郎をぶっ倒したりと色々大変だったのだ。
結局ファミレスで一泊したし。
「………一応、懐かしいんだろうけどな」
暑い太陽、生徒の制服でごった返す日常、そして競り建ったビル達。
そんな平和な新東京市が確かに存在していた。
キィ、キィ、とマリアルは車椅子を押していく。
「重くないか?マリアル」
「ううん。だって春一君、多分だけど体重私と同じか少し重いぐらいでしょ?」
「うっ」
「疲れはしたけど重くはない」
「男としてショックだ」
でもマリアルは確か春一が目を覚ました1ヶ月前から、ずっと春一のリハビリや生活を支えてくれていた。
ホテルに行ったらすぐ寝かせてやる事にしよう。
買い出しぐらいなら、一人だけでもなんとかなる。
「色々いるよなぁ……食材とか……服とか。最悪家具もいるかな」
とほほ、お金が。と春一は肩を落とす。
死亡扱いになっている以上は、銀行の口座は凍結か家族の長谷川家に譲渡されているだろう。
と、そんな春一の心を知ってか知らずかマリアルは明るく口を開く。
「大丈夫だよ、春一君。お金ならたっぷりあるからね」
「いや……でもなぁ……ぶっちゃけマリアルに頼り過ぎてるし」
「春一君は私の大切な人だもん。当然だよ」
「はは……は、………………え?」
…………え?
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