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「と、とにかく、一人で行くなんてダメだよ。車椅子はどうするの?」
「こんぐらい一人で……」
「あ、雨とか降るかもだし」
「いや、マリアル、あのな…」
「は、春一君は……ほら、エレベーターとかも…………」
「マリアル───」
と春一が口にしようとした所で、マリアルは目に涙を滲ませながら、春一を見上げた。
「マリアル!?」
「だって……春一君……また、いなくなっちゃうかも……しれないんだよ」
「…………………」
「私がいなきゃ──」
春一は、反省すべきなんだろう。
マリアルに多大な心配をかけて、彼女を泣かせてしまった。
正直ファミレスに入ったのは、彼女が少し辛そうな表情を見せたからなのだが、元々は春一が余計な心配をかけたからなのだ。
一年間………心配かけっぱなしだった。
「…………………」
ポン
と、春一はマリアルの頭に手をのせる。
「…………もういなくならねぇよ。大丈夫だ」
「………う…ん」
マリアルは怖いのだ。
また春一が自分から遠い所に行ってしまうのが。
一人で全てを抱え込んでしまうのが。
「買い出しなんか一人で出来るって。それに学園にはどのみち俺一人でいかなきゃならないし」
「……………うん」
「なんかあったらマリアルを呼ぶ。ピンチになったらマリアルに助けてもらう。…………そうするから」
「うん…………うん」
彼女は「うん」と繰り返して、まるで子供のように春一にずっと撫でられていた。
「……………………」
春一は──それだけ彼女に心配をかけてしまったのだ。
だったらその分、沢山安心させてあげないといけない。
春一にはそんな義務が、確実に残っている。
「…………、そうだ!」
元気になったマリアルは、涙の後を滲ませながら笑顔になると、なにやら鈴のアクセサリーを春一の手首につけた。
「………………?」
きれいな水色をした鈴だった。
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