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「それはね、離れた所でも通信できる鈴なの。聖装ってやつ」
「ふぅん………」
「私機械苦手だし、それなら私も安心だから」
「そう、だな。御守りみたいだし、ちょうどいいかもな」
実際、マリアルがいなかったら、足が動かない事実も、一年眠っていた事実も受け入れられず、精神が病んでしまっていただろう。
一人では飲みたいジュースも買えず、走る事も、サッカーをする事も───仕事をする事もできない。
春一の未来が、消えてしまったいたのだ。
「うん!可愛いでしょ」
そんな春一を尻目に彼女はウキウキと顔を笑顔にしながら口を開く。
「可愛い…………、あの、マリアル、俺一応男……なんだけど」
「春一君……可愛い系男子だね」
「昔はバリバリワイルドだったのに……」
いや、ワイルド系でも無かったけど!
可愛い系でも無かった筈だ。
…………せめて髪型変えれればなぁ。
一段落したら美容院でも行こう。
「ていうかさ、やっぱり俺が生きてるのは、魔技術都市的にヤバいのかな?」
「……ん……どうだろうね。イギリス十字教徒ではヒーローだけど」
「……でしたねー」
春一はイギリスではものすごい手厚い歓迎を受け、イギリス十字教徒最高客員騎士にまで認定されたのだ。
マリアルを助けたのが大きかったらしい。
ちなみに、アリス=ローの事はというと、イギリス十字教徒のメンバーはおろか、マリアルもエプリアもセレスも、アリスの存在を忘れていた。
結局、アリスが何者だったのか、謎は永遠に謎のままなのだ。
「一年前の魔技術都市でも、死傷者が出なかったわけじゃないからね……」
「…………………………」
「春一君……あ、あのね」
マリアルは何かを決意したかのように口を開いた。
「春一君さえ良ければね……わ、わた、私と……い、イギリスで暮らさないかな……」
「…………え?」
「十字教徒ならね……その、足が不自由でも、できる仕事はあるし……私も側にいられるし…」
「マリアル………」
恥ずかしそうに目を伏せるマリアルは、まるで子犬のようだった。
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