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「あのね…………言うかどうか迷ったんだけど…………春一君の事ね、恨んでる人は…沢山いるんだ」
春一が考えていた最悪のシナリオが今目の前に横たわっていた。
「完全な責任転嫁なんだよ。あのテロで死んだ人や、飛び散った破片が刺さったりした人もいて……」
「覚悟は、してた……」
そう、春一達は魔技術都市を救った後のことをあまり考える余裕を持っていなかったのだ。
「だ、だからね、春一君。イギリスで私と一緒に暮らそ?」
「………………………そう……だな」
「春一君…………!」
「だけど、今はダメだ」
まだ終わっていないから。
まだまだこれからなんだから。
「イギリスで過ごすのも楽しそうだけど、やっぱりさ、もっとゆっくり考えるよ。可能性の1つってかんじで」
「…………そだね、大切な事だもんね!」
と、そこで改めて笑顔になったマリアルを見て、春一はキィ、と車椅子を動かした。
「ホテルはこっから近いしさ、いちいち移動すんのもあれだから、今から買い出し行くわ」
「……うん、じゃあ私は早めに寝ておくね」
「おう。家具とかは、一緒に買いに行くとして、とりあえず雑貨とかだから」
「うん、行ってらっしゃい」
「なんか……照れるな」
春一はそう告げると、ファミレスから出る。
アスファルトと空に浮かぶ巨大な飛行船。そして電子掲示板。公園で遊んでいる小学生。ホットドックの販売カー。デパートの賑わい。
そして、街を歩いていた学生カップル。
──新東京市は、今日も平和だった。
「………一年振りか……………実感わかねー」
ぶっちゃけずっと寝てたからなー。
浦島太郎状態だよこの野郎。
ジーサンになる変わりに可愛い系(笑)男子だけど。
ていうか何故にポニーテール。
体も女子みたいに痩せて筋肉も少ないし。
ま、しょうがないのかなぁ……一年寝たきりだったしなぁ。
と、とぼとぼ、と車椅子をこいで、ついた先は中央駅。
まぁなんというか、あれだ。
学園に行こうとか考えているのだ。
今日は土曜日で確か学園は……ってあれ?
土曜日っつっても、今年は体育祭だから、10月末にあるしみんな練習してんのか?
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