願いの墓

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「…ッ!!」 『確か、花を墓に添えるまで後ろを向いちゃいけないんだっけ』 ダイスケの言葉が脳裏をよぎる。 「あの…」 可愛らしい声だ。 だが多分、これは幻聴だ。 耳を貸すな…。早く花を置け…。 そう腕に命令をしたが、ブルブルと震えて動かなかった。 「あ、あの…?」 「は、はい!!」 「ひっ」 恐怖と緊張のあまり大声をあげてしまった。 ていうか、『ひっ』て…。 逆に幽霊(仮)を驚かせてしまった。 微妙な空気が流れる。 「あ、あの…」 「はい…」 さっきから『あの~』しか言わないなこの幽霊(仮)…。 「あの、川北ユウジくん、だよね…?」 硬直。 緊張が解きかけていた寸前、この言葉によって一気に動きを固められた。 「どうして、俺の名前を…」 「知らない訳ないじゃない」 ますます訳が分からない。 「高校生活は楽しい?」 「……はい」 「そっか…」 応えが返ってきた瞬間、今まで頑なに動こうとしなかった腕が、動いた。 「届け…ッ!!」 花が、壇に置かれた。 …筈なのに。 「どうして、戻んないんだよ!」 「ユーくん」 え…? 「『ユーくん』って、今…」 「ユーくん。私だよ」 『花を墓に添えるまで後ろを向いてはならない』 この話が本当なら…。 振り返る。 どっと、涙が溢れ出した。 「カオリ……ッ」
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