5人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ッ!!」
『確か、花を墓に添えるまで後ろを向いちゃいけないんだっけ』
ダイスケの言葉が脳裏をよぎる。
「あの…」
可愛らしい声だ。
だが多分、これは幻聴だ。
耳を貸すな…。早く花を置け…。
そう腕に命令をしたが、ブルブルと震えて動かなかった。
「あ、あの…?」
「は、はい!!」
「ひっ」
恐怖と緊張のあまり大声をあげてしまった。
ていうか、『ひっ』て…。
逆に幽霊(仮)を驚かせてしまった。
微妙な空気が流れる。
「あ、あの…」
「はい…」
さっきから『あの~』しか言わないなこの幽霊(仮)…。
「あの、川北ユウジくん、だよね…?」
硬直。
緊張が解きかけていた寸前、この言葉によって一気に動きを固められた。
「どうして、俺の名前を…」
「知らない訳ないじゃない」
ますます訳が分からない。
「高校生活は楽しい?」
「……はい」
「そっか…」
応えが返ってきた瞬間、今まで頑なに動こうとしなかった腕が、動いた。
「届け…ッ!!」
花が、壇に置かれた。
…筈なのに。
「どうして、戻んないんだよ!」
「ユーくん」
え…?
「『ユーくん』って、今…」
「ユーくん。私だよ」
『花を墓に添えるまで後ろを向いてはならない』
この話が本当なら…。
振り返る。
どっと、涙が溢れ出した。
「カオリ……ッ」
最初のコメントを投稿しよう!