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「行ったか…」
「そうだね」
やっぱり、カオリが言ったことは間違いじゃなかったんだ。
『願いの墓』は、カオリが作りだした世界。
『ユウジへの想いから創られた世界』だ。
その世界は『川北ユウジ』以外の存在は入れない。
故に、ユウジ以外は『願いの墓』には行けず、部室に残る形となった。
さっきまでこの部室にいたユウジは、今はいない。
目を開けると、人形と共に消えていたのだ。
それは、『ユウジがカオリに遭いにいった』ということを意味していた。
そして、『ユウジはまだカオリを想っている』。
「本当にこれで良かったのかよ、マユちゃん」
「いいの。私はカオリの親友として当然のことをしたまでだから…」
「それでも、マユちゃんは…」
ダイスケくんはそこまで言って、黙ってしまった。
「やっぱり私、カオリには適わない。カオリの想いを踏みにじってまで、幸せになんてなれないもの」
ダイスケくんは返事をしなかった。ただ俯いていて、いつものあの笑顔はなかった。
「…あいつは」
涙声になりながら、ダイスケくんは続けた。
「あいつは、幸せ者だよ…」
「…うん」
…あれ?
どうしたんだろう。
涙はもう、枯れたと思ったに。
カオリが死んだとき、あんなに涙を流したのに。
「マユちゃんはやっぱ、ユウジが…」
「……うん」
ユウジが帰ってきたときは、笑顔でいよう。
それが、ユウジの幼なじみとして、そしてカオリの友人としての役目だから。
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