狭間世界

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歌声が聞こえる方角へ 進んでは立ち止まり 立ち止まっては耳を澄まし 男は歩く 歩く 何も感じないまま ただ、吸い込まれるように 誘われるがまま 彼は歩く 歩く 乾涸らびた泉が生き返るように 枯れた花が蘇るように 男の中で、何かが戻ってくるような そんな感覚の中 辿り着いた先は 天国か地獄か または幻想か その場所は、色とりどりの花が咲き乱れ 数人の女たちが歌い、笑い、踊っている 青空が永遠に広がり、月と太陽が優しく天空に鎮座し 風が花びらを運び、舞っている 気がついたら、来たはずの森は、最初から無かったかのように もう、そこには存在していなかった 歌声は、女たちから発せられているものだった 彼女たちは、男に気づき、優雅な微笑みを讃え近づいた *
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