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『お客様だわ』
『ようこそ、狭間世界へ』
二人の女がお辞儀をする
『…俺は死んだのか』
男は聞いた
久しぶりに発した人間の言葉
置いてきたと思っていたものは、一体何だったのか
『貴方が死んだと仰るのなら、貴方は死んだのでしょう』
金色の髪を肩に垂らしている女が言った
優しく微笑むその女は、まるで月の光のよう
『では…ここは地獄か、天国か…どっちなのだ?』
男の問いに、蒼く真っ直ぐな光を瞳に宿した女が答える
『貴方が地獄なのだと思うのなら、ここは地獄なのでしょう
貴方が天国だと思ったのなら、ここは天国なのでしょう』
それは、謎かけのような言葉か
それが真実であるかのような意味なのか
『世界とは、人一人が持っているものなのです
世界とは、その人自身で見るべきものなのです
他人が干渉できない、けれど、他人も存在している
それこそが世界なのです』
紅い髪の幼い顔立ちの女が言った
それが当たり前のことのように
それが常識であるかのように
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