狭間世界

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目の前に、男の家がある 真っ白な家 真っ白なカーテン 揺れる椅子 一つもおかしな所はない それは、男が住んでいた家だ 先ほどまで居た、男の家だ 違うところは、舞う花弁と女たちの歌 その家は… その家こそが彼の‘世界’だった 何故、この世界が有るのか 何故、己は存在しているのか 何故、生きているのか 全ての問いは、自分にしか分からない 全ての答えは、自分にしか分からない 幼い顔の女が言った言葉が 繰り返し 繰り返し 頭の中を駆け巡る 男は揺れる椅子に腰を落とし、瞳を閉じた 哀しみの歌が、聴こえる… 目覚めると、女たちの歌声が聞こえてきた 開け放した大きな窓から、柔らかな花の香りが家中に漂い 優しい風は男の頬を撫でる *
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