優しい嘘

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 「相楽先生へのメッセージ……  どんな事書いた?」  ナツの問いかけに「うん、ま、適当に……ね」って答えて、学活ノートをパタンと閉じた。  ナツには、恭ちゃんとの事は何も話してない。  恭ちゃんの態度は曖昧だったし、そして何より恭ちゃんと『特別』な『何か』が、あった訳じゃない。    「ナツ。  悪いけど、もうそろそろノート集めちゃうよ?」  「あーん!ちょっと待ってよ!」  そんなナツを尻目に、私は「学活ノートをそろそろ集めますので、教卓までお願いします」そうクラスメイトに呼び掛けた。   ーーーガラガラ……  「失礼します」  実習生の詰所である、職員室に程近い『資料室』。  「はい、どうぞ?」    聞こえてきたのは、恭ちゃんの声。  『資料室』には、恭ちゃんの姿しかない。  「学活ノートを持って来ました。  ……ご用がなければ、私はこれで失礼します」    失礼しました。と、踵を返そうとした時。  「頂き物のお菓子があるんだ。  お茶淹れるから、食べて行かないか?」  私は咄嗟に返事が、出来なかった。  実際。  恭ちゃんと2人きりなんて、気まずいだけだと思ったし。だけど……ハッキリ断ってしまうのも、何だか……少し申し訳ない。  「有名なお団子らしいよ?  飲み物は、緑茶でいいだろ?っていうか緑茶しかないんだけど。さ、ハルちゃん座ってよ?」    恭ちゃんはそう言いながら、ポットのお湯を急須に注いでいる。  ふふ。  なんか。  お団子に緑茶だなんて、恭ちゃんらしい、な。    「……やっと笑ってくれた」  いつの間にか恭ちゃんは、動かしていた手を止めて穏やかな表情で私を見つめていた。  
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