はじめてのおつきあい side ハル

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   私とアキ先輩は「コレ美味しいね」なんて話ながら、目の前に並んだ食事を堪能中。  その時、 「失礼しまーっす」    自分の飲み物を持って、向かい側の空席に座ったのはダイチ先輩。 「……あ。ダイチ先輩」    アキ先輩はダイチ先輩に構う事なく、もくもくと食べている。……っていうか無視? 「これ、美味しそう。  ……ね、ね?アキ。オレにもあーんってして?」    ダイチ先輩、わざとだ。  しかも、さっきの見てからかってるんだ。  アキ先輩はそんなダイチ先輩を一瞥だけして、涼しい顔でというより……冷たい顔でスルーしている。 「ね、ハル。  オレ、フライドポテト食べたい」   「あ、ポテトですか?ハイ」    私はポテトをつまんでハイっと差し出すと、アキ先輩がパクリと食い付いて来た。 「ん。美味しい」  そんな私達の遣り取りを、ダイチ先輩は頬杖つきながらじーっと見ている。 「いいなー……。  幸せそうで。羨ましいなー」  ダイチ先輩が、ボソっと呟いた。  私の頬が、ボボボッと熱くなるのが分かる。 「カワイー!ハルちゃん、顔真っ赤!!」 「ダーイーチー。ハルをからかうのよせよ」  そう言ってアキ先輩は、私の肩に手を置いてギュッと引き寄せた。  まるで見せつけるかのような先輩の態度に、私は居たたまれない。   「ちょっと、アキくんいいかな?」と、奥の厨房からマスターの呼ぶ声が聞こえた。 「ちょっと、行ってくる…待ってて?  ダイチ、ハルお願いな」  ダイチ先輩と2人きりのテーブル席に、少し心細さを感じながら私は平静を装った。   「ハルちゃん、オレさ。アキのあんな顔見れて嬉しいんだ。人間らしいっていうか、等身大のアキ。  ハルちゃん、アキには……ハルちゃんが必要なんだって事、忘れないで?」    いつもは人を和ませたり、時にはおちゃらけて楽しませたりする、 そんなダイチ先輩が、何時になく真面目な顔で言うから、少し緊張しながら話を聞いた。 「何の話?」  アキ先輩が戻って来た事によって、緊張気味だった空気が溶けた気がした。 「別に。大した事じゃないし。  じゃ、ハルちゃん。オレとも仲良くしてね」 「あ。ハイ。  こちらこそ……お願いします」        そう言うと、ダイチ先輩は他のテーブルに移って行った。    
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