はじめてのおつきあい side ハル

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    「先輩。今日は楽しかったですね?」  お店を出ると辺りはすっかり暗く、夜の表情。   「ハルが楽しめたなら良かったよ。……ほら、人が多いからはぐれないようにしっかり握って?」  さすがに土曜の夜の繁華街だけあって、グループやカップルが楽しそうに行き交っている。  先輩は『はぐれないように』と。  指を絡めた、いつもと違った手の繋ぎ方をした。  馴れない手の繋ぎ方に、掌が汗ばむのが自分でも分かって……何だか無性に恥ずかしい。 「ハル 。顔赤いよ?何度もキスしてるのに、もしかしてまだ恥ずかしいの?」  そうニヤリと笑ったアキ先輩の顔はスゴく意地悪な顔。   「…っ!!!」    先輩のからかうような……意地悪な言葉に、私は羞恥から言葉にならない。      先輩はそんな私の表情(かお)を見て、楽しんでいるように見える。……いや、きっと楽しんでる!    もぉ……!  アキ先輩、悪趣味ですっ! 「何でそんなイジワル言うんです、か?  もう……私、アキ先輩と口聞きませんっ!!」  少し強く出た私を尻目に「ハルと話が出来ないのは困るなぁ」と、  慌てた風を装って、余裕そうに笑うアキ先輩。   「だけど、なぁ。ハルもまだまだ『です』『ます』使ってるからなぁ。これはお仕置きだよ」   そうでした。  私、約束守れてない……。 「……う。  ごめんなさい」  先輩はふ、と笑う。 『仕方ないな』って先輩の顔がそう言ってる。 「いいよ。許す。  けど、もっとオレに慣れてね」    そう言うと、  先輩は私のホッペにチュッとキスを落とした。  
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