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アキ先輩は「すぐに家に入れよ」って言ったけど、結局私はアキ先輩の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってしまった。
先輩は何度も何度も、振り替えっては手を振ってくれた。そんな小さな、些細な事にも私の心はほっこりと温まった。
家に入るとお兄ちゃんはまだ帰ってなく、ママだけがリビングでくつろいでいた。
「ハル?
あ、お帰りー」
家の中にはママの気配だけ。
「ただいま。
あ、お兄ちゃんまだなんだ?」
「そう。一緒じゃなったんだね
あ、ハルはアキくんと帰ってきたんだ?」
「そ、そぉ…だけど……?」
ママの予期せぬ質問に、違う意味で心臓が煩い。
何だか気まずくって、そそくさと2階に退散しようとした私をママは呼び止めた。
「ね、ハル。
ちょっとママとお話しよーよ?」
そう言って、ソファーをポンポンとリズム良く叩いてる。スゴイ笑顔で……。
ーーーどうやら。
座れと言っているらしい……。
私は覚悟を決めて、私はママの横に座った。
ーーー
ママは前置きもなくストレートに「アキくんとどうなってるの?」と、聞いてきた。
それがあまりに直球だったから私は返す言葉を詰まらせた。
別に隠すつもりはなかったけど、改めて話すのはやっぱり気恥ずかしい……。
呼吸を整え……観念した私は、正直に「実は、真柴先輩と付き合ってるんだ」と話すと、
「そうなんだ?!良かったね」ママは自分の事のように喜んでくれた。
反対されるとは思ってなかったけれど、ママの反応が思った以上に良かったから、私は胸を撫で下ろした。
今、着ている『fruits drops』を戴く事になった理由もきちんと話した。
「今度、アキくんを連れて来なさい。一緒にごはんでも食べましょ?
それにしても。ハルも彼氏が出来ちゃう年頃なのね。パパ……寂しがっちゃうかな…?」
ママは、パパのリアクションを思い浮かべてるのか、クスクス笑っている。
『寂しがっちゃうかな』なんて言いながら、ママは随分楽しそうなんですけど!?
ママと『彼』の話をするなんて、何だかくすぐったかったけれど、
ママが「頑張りなさい」って言ってくれたから、とても勇気付けられた。
「……けれど、
出来ればゆっくり大人になってね……」
少し寂しそうに…ママはそう付け加えた。
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