はじめてのおつきあい side ハル

35/36
5301人が本棚に入れています
本棚に追加
/955ページ
 アキ先輩は「すぐに家に入れよ」って言ったけど、結局私はアキ先輩の後ろ姿が見えなくなるまで見送ってしまった。  先輩は何度も何度も、振り替えっては手を振ってくれた。そんな小さな、些細な事にも私の心はほっこりと温まった。  家に入るとお兄ちゃんはまだ帰ってなく、ママだけがリビングでくつろいでいた。 「ハル?  あ、お帰りー」    家の中にはママの気配だけ。     「ただいま。  あ、お兄ちゃんまだなんだ?」   「そう。一緒じゃなったんだね  あ、ハルはアキくんと帰ってきたんだ?」   「そ、そぉ…だけど……?」  ママの予期せぬ質問に、違う意味で心臓が煩い。  何だか気まずくって、そそくさと2階に退散しようとした私をママは呼び止めた。   「ね、ハル。  ちょっとママとお話しよーよ?」  そう言って、ソファーをポンポンとリズム良く叩いてる。スゴイ笑顔で……。 ーーーどうやら。  座れと言っているらしい……。  私は覚悟を決めて、私はママの横に座った。   ーーー    ママは前置きもなくストレートに「アキくんとどうなってるの?」と、聞いてきた。  それがあまりに直球だったから私は返す言葉を詰まらせた。  別に隠すつもりはなかったけど、改めて話すのはやっぱり気恥ずかしい……。    呼吸を整え……観念した私は、正直に「実は、真柴先輩と付き合ってるんだ」と話すと、 「そうなんだ?!良かったね」ママは自分の事のように喜んでくれた。    反対されるとは思ってなかったけれど、ママの反応が思った以上に良かったから、私は胸を撫で下ろした。  今、着ている『fruits drops』を戴く事になった理由もきちんと話した。   「今度、アキくんを連れて来なさい。一緒にごはんでも食べましょ?  それにしても。ハルも彼氏が出来ちゃう年頃なのね。パパ……寂しがっちゃうかな…?」  ママは、パパのリアクションを思い浮かべてるのか、クスクス笑っている。 『寂しがっちゃうかな』なんて言いながら、ママは随分楽しそうなんですけど!?    ママと『彼』の話をするなんて、何だかくすぐったかったけれど、 ママが「頑張りなさい」って言ってくれたから、とても勇気付けられた。 「……けれど、  出来ればゆっくり大人になってね……」  少し寂しそうに…ママはそう付け加えた。      
/955ページ

最初のコメントを投稿しよう!