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日曜日。
朝起きるとお兄ちゃんの姿はすでになかった。
ママに聞くと、昨日の夜は結構遅い時間に帰ったらしい。
「ね、ママ。お兄ちゃんは?」
「シュウなら少し前にジョギングに出掛けたわよ?」
うわ。お兄ちゃんスゴイ。
昨日夜、遅かったんだよね?
「お兄ちゃんを見習えとは言わないけど、ハルもさっさと顔ぐらい洗いなさいよ?」
「ハーイ」
ママの言葉がお小言にならない内に、私は急いで洗面所に向かった。
部屋で明日から使う教科書をパラパラめくっていると、下から私を呼ぶお兄ちゃんの声。
1階に降りるとお兄ちゃんから紙袋を渡された。
「ほい。これ、アキから。
オマエに渡しとけ……って頼まれた物」
紙袋の中身は、私の制服。
「お兄ちゃん、アキ先輩に会ったの?」
「そ。偶然な。アキもジョギングしてた。
で、オマエに渡して欲しい物があるからって、アキのマンションに寄って来たんだ…」
「そうなんだ。
そりゃぁ、お手数おかけしました」
「どういたしまして」
「部活でアキ先輩に会ったら『ありがとう』って伝えてくれる?」
私がそう言うと、お兄ちゃんはちょっと面倒臭そうに顔をしかめた。
「えっ、ヤダよ。っていうか、さぁ……オレが言うよりハルが電話して直に伝えた方が喜ぶと思うけど?」
そっか。
……なるほど。
「分かった。電話してみるよ」
私はリズム良く階段をかけ上がった。
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