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「「ナイシューッッ!!!」」
体育館に響く声。いつもと同じ風景。
2階の観覧席へとふと目を遣る。
東側の隅っこの1番前。
いつもハルが決まって座る席。
ハルがその席に座るようになったのは、ほんの数日前からなのに……オレはすっかりソコを気にする癖が習慣付いてる。
「残念ー。
ハルちゃん、不在♪」
背後でダイチのふざけた声がする。
チッ!!!
……煩い。
「シュウー?
次の5対5のメンバー割り、オレにやらして?」
ダイチにはちょっとお灸を据えないとな。
コテンパンに揉んでやる、か!
ーーーーー
部活終了時間まで、あと少しの頃。
2階の観覧席。
いつもの場所にハルの姿を見つけた。
目聡いダイチは、すでにハルに気付いて手を振っている。そんなダイチへペコリと挨拶する律儀なハル。
ーーーその時、
ハルの背後から近寄る、男の姿が視界に入った。
ウチの生徒……だな。
誰だ?
ハルの知り合い、か?
見た事がない顔だから、2年か1年かのどっちかだろう。その男はハルの横に座って、何かを熱心に話している。
ハルは明らかな困惑顔。
オレへとチラチラ視線を向けている。
男はそんなハルの気持ちもお構い無しに詰め寄っている。
しまいには、男バスメンバー全員が気付く程騒ぎが大きくなっている。
「悪い……シュウ。
今日、もうオレ上がるわ」
オレの視線は一点に縫い止められたまま。
離す事が出来ない。
シュウはそんなオレに、ヒラヒラと手を振って言った。
「ハイ。お疲れー。
それと…アイツの事ヨロシクなー」
あぁ、と。
心の中頷いて、オレは急いで2階席にかけ上がった。
「……オマエ、何してんの?
オレの彼女に、さ」
振り返った男子生徒は、オレの顔を確認すると表情を固まらせたまま、ゆっくりとハルから離れた。
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