5302人が本棚に入れています
本棚に追加
まず先輩が案内してくれたのは生徒玄関だった。
けれど入学案内書には『中庭にてクラス発表』そう記入されていた。
クラスの確認すら出来てない私には、自分の靴箱はもちろん教室までたどり着く事は不可能では?と不安になった。
先輩に手を引かれるまま歩いて来たけれど。
まずは中庭に行った方がいいんじゃないかな。そんな考えが頭に過った時だった。
「キミの名前……聞いてなかったと思うけど?」
先輩の優しく落ち着いていて、ちょっぴり甘い口調に、私はすっかりリラックスしていた。
「あ。すっ、すみませんっ。
私、桃谷羽琉と言います」
「モモヤさん?へ、ぇ……。
ん。オッケー。ハルちゃんだね。覚えたよ。
ちょっと待って?今、クラス調べるから」
そう言うと、先輩はポケットから携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
しばし……無言。
「あー。オレだよ。
新入生のモモヤハルさんのクラスを調べて?よけいな事話してる暇ナイから、早くしてね?」
さっきまでの先輩とは全く別人みたいな早口。そして雑で淡々とした話し方。
私は口を挟めるような立場でないから、決して口にはしないですけど。
先輩は、二重人格ですか?
何だか……
ちょっと怖いです、よ?
最初のコメントを投稿しよう!