5302人が本棚に入れています
本棚に追加
電話の時の高慢な口調とは正反対に、私に対しての態度は温厚で誠実。いたって紳士的だった。
新入生(=私)への、気遣いがそうさせてるのかな?
よくわかんないけど……。
「お待たせ。ハルちゃん。ハルちゃんのクラスは1年3組だって。教室へ案内するから急ごう」
「はいっ!」
先輩に出会えて、先輩に声かけてもらえてホントに良かった!
ーーー
さすがに集合時間を過ぎている時間だったから、廊下に出ている生徒はおらず、1年生の教室がある階は静まりかえっていた。
各教室からはヒソヒソと、少し遠慮がちな話し声が聞こえるだけ。
「じゃ、この突き当たりが1年3組だよ。
もう1人でも大丈夫だよね?」
そう言って、先輩は目を細めた。
「ホントになんてお礼を言ったらいいか。
このご恩は決して忘れません。
先輩、本当にありがとうございました!」
「ご恩なんて!
クスクス……ハルちゃんは真面目なんだね?
気にしないで。また困ったことがあったらいつでも言っておいで?
じゃ、僕は行くから。ハルちゃんも教室に入りなよね?」
そう言うと先輩は踵を返し、ひらひらと手を振りながら行ってしまった。
私はボーッと先輩の後ろ姿が見えなくなるまで見送った後で……気が付いた。
しまったっ!!!!!
先輩の名前聞くの忘れてた!
大恩人なのにーーー!
私のドジっ!!!
最初のコメントを投稿しよう!