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「これ、どうしたの」
「さっき、買ってきたんだ」
その言葉は聞いてはならなかった。
「さっき……」
慎也は午前に買い物をした。だから待ち合わせは昼だったのだ。
遅刻してもどこかうわついていたのもそのせいだ。
瞬時に怒りがこみ上げる。
こんなことで私が喜ぶと思ったのか!
「ねえ、慎也。私のこと好き?」
さっき不安になったことを尋ねた。
「うん」
慎也らしい癖で控えめでそう答える。
だがこの時は、それが激しく不安にさせる。
「はっきり言って。本当に好き?」
「うん」
好きだよ、と言葉には絶対してくれないのだ。
はにかんだ曖昧な笑顔は、ただ照れているようにも見えなくもないが、はっきりしないその態度は、祐子の心をひどく沈鬱にさせた。
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