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「バカ!」
祐子は走って逃げ出した。全速力だ。
本当はもっと言いたいことはあったのだが、涙があふれてきた。
惨めな顔をさらしたくはなかった。
視界はかすむが、構わずただ走った。
悲しかった。
祐子は泣き虫だった。
ずっと自分でも弱い人間だと思ってた。
最近は変わったと思ってたが全部、錯覚だったのだ。
薄々は思ってた。
付き合ってるはずなのに、あまり相手にされないのも、会いに行くのはいつも自分からだったのも、好きなのは自分だけだったからなのだ。
目の前が真っ暗になる感じとは正にこういうことかもしれない。
腕も力は抜け、体は熱くなっているのに内側はとても冷たく感じた。
血液が凍っているような感じだった。
「祐子ー」
声がした。
追いかけてくれたんだ。
慎也は叫ぶ時まで控えめな感じだった。
おかしくなった。
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