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「あんたが家出したじゃじゃ馬娘?」
じゃじゃ馬娘って…。
いきなり失礼なことを言ってきたのは、わたしの教育係を勤める女中の大先輩、おサエさんだ。
「はい、今日からよろしくお願いします」
「はあん…若いのによくやるわねぇ。そんなに反対されたの?」
「は?」
「やあねぇ、誤魔化さなくたっていいのに」
あっ。もしかして家出の話かな。いや、家出は普通お父さんとかには伝えないと思うんだけど…。
…。よくわかんない。
「そこまでしたのに、腹突かれて捨てられるなんてね」
んん?
…まさか、おサエさん……わたしを親に反対されて駆け落ちした挙げ句に男に捨てられたと思ってるの…?
…そんな風に見えるのかな……。
「いやあの違、」
「ようく分かる!」
否定する前に、おサエさんに肩をガシリと掴まれた。痛い、痛い!
そういえば今更すぎるけどわたしお腹に穴開いてるから動いたらいけないって朝永倉さん言ってなかったっけ。
…?
永倉さんが大袈裟なだけ?
ちょっとお腹を触ってみたけど、もうあんまり痛くない。朝は永倉さんに無茶されたからなぁ。実は治りかけとか?
…まだまだいっぱい謎はある。
「わかるよ、親に反対されても止められない乙女心…!ああ、お父様!わたくしは、わたくしは…あの方と生きていきます…!」
興奮しながら言うおサエさんの声がだんだん大きくなっていく。帰ってきてください…。
おサエさんが晩御飯の準備を始めたとき、わたしの目はきっと死んでいた。いやむしろ絶対に死んでいた。
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