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晩御飯のいい匂いが、台所を満たす。
「あんた、その年で料理慣れしてないって、どんな名家のお嬢さんなのよ」
「いや…あはは…」
今日一日(というか一晩)でついた傷は数知れず。ジンジンとまだ傷口が痛むが、今はそれよりも。
「腹減ったー!」
ドヤドヤとたくさんの男の人が広間に入ってきた。あっ、土方さんたちも居る。
隊士たちのためにご飯をセッティングして、自分たちのぶんを持って、隅のほうに座った。
「さあさあ、さっさと食べてしまいな」
「いただきます」
わーい、と大根お味噌汁を飲む。
味が…薄い……。
しかもよく見たら量も全然ないし、…隊士さんたちって大人の男の人で、しかも鍛練とかしてるんでしょ?
…足りるのかな。
「昨日はもう少し豪華だったんですよ」
「うわっ」
いきなり後ろから話しかけられて、体がビクッとして味噌汁を落としそうになった。
「お、沖田さん…」
「あはは、びっくりしました?」
危うく大惨事ですよ。
「ああ、昨日はなかなか豪華だったなぁ」
近くに座っていた永倉さんがご飯をガツガツ食べながらしゃべり始めた。
「うわ、ご飯粒散らさないでくださいよ」
「すまんすまん、昨日の魚はうまかったなぁ」
「そりゃそうよ、あたしが買ったんですもの」
「よっ!おサエさん!流石女中の鑑!」
ご飯のときに騒がしいのは、時代を超えても変わらない。なんだかすごく安心した。途端に薄いお味噌汁も固いご飯も美味しく思えてきて、わたしは無言でひたすらご飯を食べていた。
ただ一つ不満を上げるとするならば。
…量が、少ない…なぁ。
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