通り魔

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「最近、通り魔が多発している。髪の短い女だけを狙って刺すんだとよ」  気をつけな、と先生が言った。  すると、クラスの皆が一斉に凛華を見る。  ……それはそうだろう。  このクラスで、髪が短いのは凛華だけなのだから。 「じゃあ、かいさーん」  言うことだけ言って、先生はとっとと教室から出て行く。やる気がとことん無いやつだ、と誰かがボヤいた。 「凛華!あんた、気をつけなよ?」  慌てて駆けてきた友達に言われ、あはは、と苦笑する。 「こんなに世界は広いんだよ?まさか、通り魔に刺されるなんて…。そんなの奇跡的だよ」  そう笑って、鞄を持つ。 「それじゃあ、また明日ね」  靴を履き、外へ出る。  奇跡的だよ、なんて友達に大口叩いておきながら、本当は少し怖かったりする。少し、ね。  なんだか早く帰りたくて、少し小走りで家へ急ぐ。  …が、後ろに人の気配を感じて、固まってしまった。  後ろ、後ろに、い、居る。  サアアアーッと背中が冷たくなる。  まさか。  先程の、先生の話が頭の中を回る。通り魔が、髪の短い、髪の短い通り魔が!間違えた、いや、うわあああっ!  そして、パニックになっている間に、ぶすり、と音がしてお腹のあたりが熱くなる。 「…………っ…」  ゆっくりと、そこへ目を向ける。  刃物の先が見えた。  通り魔だ…!  そう思った時にはもう遅く、体が前のめりに倒れてゆく。  そして、もうだめだ、そう思って、ゆっくりと目を閉じた。  倒れた場所。コンクリートであるはずの地面が、土になっている事にも気付かずに――。
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