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二人の緊張感と集中力が最高潮に達した瞬間、椿姫の合図が響いた。
「よぉーい、開始!!」
合図と同時に、影の紐が切れ、二人が同時に駆け出した。
「おぉぉおおおおお!!」
「はあぁぁあああああ!!」
物凄い勢いで、物凄い土煙を巻き上げながら二人は駆ける。今のところ二人共不正はせず、正々堂々と勝負している。
「じゃあな鶴姫ー、元親ー…といっても、もう聞こえないか…」
既に点になった二人を見ながら、椿姫はポツリと呟いた。いろいろあったとんでもない一日だったが、実を言うと、楽しかったとも思えたのだ。
見知った友と新たな友。二つの出会いが、面白くて仕方がない。
誰にも言えないが、椿姫はそう思っていた。
「ここは…外は予想も出来ない事が溢れてる。辛いこともあるけど、楽しくて面白いですよ、兄様。」
そっと呟き、椿姫は赤く染まった夕空を見ながら、一人笑みを浮かべていた。
その笑顔を独り占めしていたのは、夕空だった。
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