10th story【その男、ドSにつき】

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「何を忘れてたって?」 「え、と……」 立夏にバレたら嫌だから隠蔽すんのを忘れてました、なんてぜってーーー言えん! 「俺に事情を話すのを忘れてたんだよな?」 「あ、ハイ」 立夏の有無を言わせない口振りに、ついこっくり頷いてしまう。 久々に立夏が怒ってんの見た。 纏う雰囲気が冷ややかでまじ焦る。寒い。コエー! 「じゃ、そのやらしーキスマークが付いた経緯を聞かせてもらおうか」 ベッドに腰掛けて脚組んでる立夏とは対照的に、俺ときたらベッドの上にちょこんと正座。 別に要求された訳じゃねぇけど、自然にこうなった。 だって立夏コエーんだもんよ! こんなことなら、最初に素直に謝っておくべきだった!俺のバカ!間抜けー! 「昨日サークルの飲み会に行きまして」 ……なぜ敬語。 もういーや、このままで。 「酔ったらキス魔になる奴に、一瞬の隙をついてやられました」 「へぇ」 あああ目を細めんなコワいからっ! 「でも!そいつ男女関係なくキスして回るし、全くもってやましいことはありませぬ!」 「ありませぬ、ってお前……」 テンパりすぎて語尾が昔の人風になってしまった。 立夏がぷっと吹き出して、ちょっとだけ雰囲気が柔らかくなった……気がする。
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