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「そいつ、男?」
「うん。立夏も知ってると思うけど、黒瀬」
「あー……あいつか」
俺の口から出た名前を聞いた途端、立夏が苦々しい顔になる。
黒瀬は、入ってるサークル(ちなみに飲み会中心の名ばかりテニスサークル)が一緒の1個下の後輩。
服の趣味が似てるせいもあって、今年の春に黒瀬が入ってきてすぐに仲良くなった。
爽やかな長身イケメンで、有名なメンズ雑誌の読者モデルをやってるちょっとした有名人。
それはもう、立夏並に女にモテる。
俺も雑誌のストリートスナップに一緒に呼んでもらったりして、年は1個違えど仲のいい連れだ。
だからもちろん、立夏とも顔見知りなんだけど……
黒瀬は立夏を一目見るなり気に入ってしまったらしく、立夏の姿を見かけるたびに一緒に読者モデルやりましょう!と鼻息荒く勧誘してくる。
当の立夏は全く興味がないらしく断り続けているものの、黒瀬は一向にめげない。
顔を見るたび追いかけてくる黒瀬を立夏は面倒臭い奴だと認識しているらしい。
まぁ、本人に悪気はないんだろうだけどさ……。
「キス魔の黒瀬の前で気抜いた俺が悪かった!ごめん立夏!!」
「ほんとにな。簡単に印つけられやがって。もっと気ィつけろよバカ」
黒瀬が俺に恋愛感情がないことを知ってるからか、立夏の表情が和らいだ。
良かった……!
一件落着!
……なんて、そんな甘いコトを考えた俺がバカでした。
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